若手歯科医師対象臨床セミナー 歯科と栄養

歯科は元来,咀嚼障害の改善を目途に展開してきました。一方で超高齢社会の到来によって,歯科診療の結果指標は,咀嚼機能の改善から,摂食機能全体の改善へ,そして,栄養状態の改善へと変化しています。実際に咀嚼障害を有することにより摂取エネルギーやたんぱく質ばかりでなく,各種栄養素の摂取が低下することが多くの報告で明らかにされています。

近年,サルコペニア対策,フレイル対策が叫ばれるなか,健康寿命を延伸する方策として,栄養の視点を取り入れた歯科医療が必要なのはいうまでもなく,咀嚼障害が重度となっても安全に摂取できる食事の選択や十分な栄養摂取が可能となるように,咀嚼機能に応じた食形態の選択や咀嚼機能を考慮した栄養指導も必要です。そこで,歯科医師として必要となる知識は栄養学であり,連携を取る職種は管理栄養士になります。歯科医師として学ぶ栄養とは何か、また管理栄養士との協働、多職種との連携について学ぶセミナーです。

セミナー概要

開催日
2025年1月19日(日)10:00~16:30
講師
⚫︎磯脇 浩二 先生
(医療法人優凪会 いそわき歯科)
〒899-5106 鹿児島県霧島市隼人町内山田1丁目149-16 電話: 0995-73-4185
⚫︎池尾 隆 先生
(大阪歯科大学 歯学部 生化学講座 教授)
概要
歯科と栄養・管理栄養士との協働、多職種連携
会場
医療法人優凪会 いそわき歯科
〒899-5106 鹿児島県霧島市隼人町内山田1丁目149-16 電話: 0995-73-4185
主催
一般社団法人 歯科業務標準化機構(電話:06-6266-5758)
〒542-0081 大阪市中央区南船場1-11-9 長堀安田ビル
タイムスケジュール
10:00~10:30 講師・施設(医療法人優凪会 いそわき歯科)紹介
10:30~12:00 講義 磯脇浩二 先生:『予防歯科』から 『口腔健康管理』への取組(仮)
12:00~13:00 昼食・休憩・医院見学
13:00~16:00 講義 池尾隆 先生:患者さんの「知りたい」に応える歯科栄養
16:00~16:30 質疑応答
※昼休憩時・セミナー終了後に医院見学可
講義内容
適切な栄養の摂取は健康な生活を営むために不可欠である。適切な食事は認知症、フレイル、非感染性疾患(Non-communicable Disease:NCD:不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因が共通しており、生活習慣の改善により予防可能な疾患)を予防し、健康寿命の延伸にも不可欠なものである。う蝕や歯周病、口腔乾燥や口腔粘膜疾患は歯の喪失、口腔機能の低下、さらには適切な栄養の摂取を障害する。一方、菓子類など糖質の多い食品はう蝕のリスクを増大させる。不健康な食事や低栄養は口腔疾患、特に歯周病のリスクとなる可能性がある、低栄養や抗酸化物質と歯周病、全粒穀物、野菜、果実の摂取と口腔がん、チーズと牛乳(カルシウム、カゼイン)とう蝕との関連など、食事が口腔疾患に及ぼす影響は数多く報告されている。一方、歯の喪失をはじめとする口腔機能の低下は、摂取する食品や栄養素、食事の多様性にも影響する。高齢者の栄養状態は、口腔の環境や機能と関連し、歯の喪失に伴う咀嚼能力の低下は、食品の選択に影響を及ぼす。つまり口腔の健康と適切な栄養摂取は相互に関連していると考えられる。
池尾隆先生の講義概要
●テーマ
患者さんの「知りたい」に応える歯科栄養
~医食同源➜歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士の役割は?~

●本日の到達目標
1.歯科医療のなかで栄養学が必要である理由を説明できる。
2.歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士の職域、職能を説明できる。
3.栄養素・食品の機能を知る必要性を説明できる。
4.日進月歩の新しい知識を得ることの重要性を理解する。
5.将来の自身の姿を見据えて研鑽を積むことの重要性を理解する。

●本日の講演の概要
1.最も知識量の多い卒直後の先生方へ
knowsからknows howへ、そしてshows howを経てdoseのステップへ
2.歯科領域で「栄養」が重要であることを示す事実
歯学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)と歯科医師国家試験出題基準(令和5年)の改定内容、全国の歯学部で進められる栄養学教育と他職種連携教育
3.管理栄養士の職域、医院内での相互理解と役割分担
管理栄養士が卒前に学んできたことを紹介し、それを踏まえた歯科医院内での役割分担を、予防医学の3相5段階の観点から解説
4.世の中に出回る健康食品を注意深く見ることの重要性
消費者を護るための保健機能食品制度の意義、それを踏まえた歯科医院での患者への助言
5.栄養学の基礎知識~食事摂取基準を中心に~
エネルギー消費と供給のバランス、各栄養素の摂取基準を栄養素レベルで理解し、さらに食事バランスガイドを参考に日常に落とし込むためのヒント
6.生活習慣病と生化学検査
メタボリック・シンドロームの定義の意味、すなわち、なぜあのような判断基準が設定されているのか、また、その際に用いる生化学検査が示している体内の代謝の状況
7.少しだけ骨代謝、カルシウム代謝の話題を
体内でのカルシウムの働きをまとめ、骨代謝やカルシウム代謝の概要を解説。さらに歯の脱灰阻止、再石灰化促進の仕組みを中心とした「トクホ」食品
8.若き歯科医師の先生方へ
「今」だけではなく、自身が最も活躍する30~40歳代を見据えた研鑽が大切

講師紹介

磯脇 浩二(いそわきこうじ)先生
医療法人優凪会 いそわき歯科 院長
講師プロフィール
●経歴:
1993年 鹿児島大学歯学部卒業
1993年 鹿児島市・枕崎市の開業医にて勤務
1999年 輝北町立歯科診療所を引き継ぐ
2004年 同地にて輝北歯科開業
2010年 いそわき歯科 開業
●講演概要
患者さんが歯科医院に来るのは痛くなって(疾患)からになります。一般的に歯科治療は補綴治療による機能回復、リハビリテーションを行う「三次予防」から始まります。補綴治療が終了し、メンテナンス(予防歯科)により疾患を早期発見、早期治療し、重症化を防ぐ「二次予防」に移ります。現状の歯科医療では、二次予防と三次予防が中心です。
健康寿命を伸ばすためには一次予防がもっとも大切です。健康寿命とは、健康上のトラブルで日常生活を制限されない期間のことで、介護を必要とせずに暮らせる期間を健康寿命と呼びます。一次予防は糖尿病・高血圧・脳卒中など生活習慣病の予防により、健康寿命の延伸に有効です。日本では管理栄養士が歯科スタッフとして参加することにより、一予防を主に担当し、栄養管理、運動、休養などによって、生活習慣の改善指導をすることで健康寿命の延伸が目指せます。これからの歯科は三次予防を歯科医師、二次予防を歯科衛生士、一次予防を管理栄養士が担当するチーム医療が重要です。2019年頃から管理栄養士の採用を始め、何人かの管理栄養士を雇用しましたが、なかなか定着しませんでした。最近になり、歯科助手や受付をしながら、管理栄養士らしい仕事もできるようになりました。その管理栄養士との協働についてもお話しします。
●施設概要
①施設名称:医療法人優凪会 いそわき歯科
②チェアー数:9台
③住所: 〒899-5106 鹿児島県霧島市隼人町内山田1丁目149-16
④電話番号: 0995-73-4185
⑤診療内容:一般歯科、小児歯科、矯正歯科、予防歯科
⑥HP : https://www.isowaki-shika.com/
E-mail : isodc1004@gmail.com

 

池尾 隆(いけおたかし)先生
大阪歯科大学歯学部生化学講座 主任教授
講師プロフィール
●学位
歯学博士(大阪歯科大学)
●研究分野
細胞外マトリックス代謝、骨代謝、医学教育
●略歴
1983年 大阪歯科大学 歯学部 卒業
1989年 歯学博士(生化学)
2001年 大阪歯科大学 教授(名称変更により現 主任教授)
2001年 大阪歯科大学大学院歯学研究科 教授(現在に至る)
●資格
医学教育専門家(日本医学教育学会)
●委員歴
(一社)医療系大学間共用試験実施評価機構 歯学系CBT各種小委員会委員
日本歯科医学教育学会 歯科医学教育者のためのWS(富士研)TF
日本学術振興会 科学研究費助成事業審査委員(歯学)
●所属学会
日本生化学会(評議員)、日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、
日本歯科医学会、歯科基礎医学会(理事)、日本再生歯科医学会(常任理事)、
日本総合歯科学会、日本ナノバイオメディカル学会、
日本歯科骨粗鬆症研究会(常任理事)、大阪歯科学会(監事)
日本医学教育学会、日本歯科医学教育学会、日本歯科衛生教育学会(理事)、
日本マイクロカウンセリング学会 ほか
●自己紹介
1958年、和歌山市で生まれ高校まで和歌山で、以後、1977年に大阪歯科大学に入学、卒業後も大阪歯科大学(生化学講座)に勤務しています。結婚後は、今、話題の兵庫県に居住しています。学生時代には硬式野球部とコントラクトブリッジ部に所属、現在も近畿学生野球連盟の理事、審判員として活動しています。
研究面では、細胞外マトリックス成分であるコラーゲンやプロテオグリカンの代謝研究から始まり、教授就任後は特に骨代謝(破骨細胞と骨芽細胞の機能、細胞内シグナル伝達系)に焦点をあててきた。教育面では、卒前に生化学、口腔生化学、歯科栄養学を、歯科衛生学教育でも生化学、栄養学を担当している。
このような背景から、本講座では歯科医学や歯科衛生学と栄養学の接点について、先生方とともに考えたいと思います